慢性疼痛との関わり方
こんには。
Twitterでも言いましたが、「自己効力感なんて思い込み。思い込んだほうが絶対得…」
そうなんですよ。自己効力感って自分の『行動』も変えられますが、痛みまで変えちゃうんです。
今回はそんな記事になります。
少し専門的な部分もありますが、拒絶する事なく読んでください。明日からの健康の一助になれば幸いです。
慢性痛について
痛みが長く続いてる人(慢性痛)が訴える部位「背中下部」58.6%、「肩」38.7%、「下肢部」37.9%という報告があります(服部,2006.)。
皆さんはどうですかね。私は予想通りと言ったところです。腰と肩の痛みは、人が二足歩行を手に入れた宿命と言わざるをえない気がしますよね。
最近の報告では(McNaughton DT et al,2018.)、医学的に説明がついてもつかなくても、痛みと心理学的要因には関連があると言われています。
腰痛についてですが、殆どの人が6週間以内(Kose B et al,2006.)に回復すると言われていますが、5−20%の人は慢性痛に移行し、再発を繰り返すと言われています。
慢性痛に移行する原因の一つとして、運動恐怖や抑うつなどの心理社会的要因が関係する事が明らかとなっています(Costa L da CM et al,2009.)。
つまり、身体に何かするだけでは良くならない人がいるという事。身体的要因だけでなく、心理社会的要因にも目を向けなくてはいけないって事ですね。
画像所見に気をつけて
日本人を対象とした画像所見と腰痛の関連性について、10年間追跡した研究では、腰痛の発症または増悪と画像所見上での進行度合いは関連がない事が報告されている(Tonosu J et al,2017.)。
痛みについて-少し難しめ-
痛みは、一般的には組織に侵害刺激が加わり、受容体で電気信号(活動電位)に変換され、それが一次感覚神経を伝わり、
脊髄でニューロンを変え二次感覚神経で脳に伝えられ、痛みを認知する。さらに下行性疼痛抑制系(調整系)により疼痛が調整されるという解剖生理学的伝達が行われる。
痛みは本来警告信号であり、大きな損傷から身体を守ろうとする一過性の体験である。
医療従事者が気をつける事
医療従事者側としては、クライアントの痛み・不安を理解する努力を惜しんではならない。
痛みが長期化すればするほど、身体的な機能障害だけでなく、心理社会的要因による問題も重複するため
慎重に対応すべきだし、腕の見せ所だと思う。どこに行っても治らなかった痛みを治せるセラピストになろう。
重要な事は、まず生物学的因子を十分に評価し、見逃さない事。理学療法士としては、医師とコミュニケーションをとり対応する。
痛みは個々によって捉え方が違うし、原因や経過も様々だ。
そんな中、病院に来院する人は痛みの原因追及に一所懸命で、医療機関での薬の処方など受動的な治療に依存するようになる事が多い。特に慢性疼痛では。
このような時医療者側は、痛みの原因として明らかな器質的異常所見がない場合に、患者の訴えを精神的なものや不定愁訴、
または大袈裟で演技的…と捉えてしまう事がある。いやいや、困ってなかったら病院こないですよね。
患者に対して『共感』する、訴えを『傾聴』するとかって言いますよね?本当にそうですかね?少し違う気がします。
まず、痛みは『共感できない』。痛みは、本人にしかわかりません。違いますか?
我々ができるのは、一緒に治療する為に『共有』する事だと思います。その痛みによって何ができなくて、何ができるのか。
避けられない痛みを受け入れる事で、QOL(生活の質)を向上させる事を一緒に考えるのです。
コミュニケーションも立派なスキルだし、相手を理解する事は医療以前の問題で本人の『人間力』のような気がすます。
長期間痛みと向き合っている方へ
痛みがあっても様々な活動ができるという自信の程度をあらわす痛みの『自己効力感』は、健康状態に関するQOL(生活の質)の増加(Borsbo B et al,2010.)や
痛みに伴う生活のしづらさである生活障害の低下(Turner JA et al,2005.)と密接な関連を持つ事が報告されています。
自己効力感(セルフ・エフィカシー)を高めると治療促進するだけでなく、治療終了に向けての自信と終了後の再発防止にもつながると言われています。
逆に自己効力感が低い場合、痛みにより障害や抑うつに関与すると言われている(Arnstein J et al,1999.)。
最近の報告によると、破局的思考や抑うつ、不安といった痛みに対する不適応的な思考や感情よりも、痛みの自己効力感のような適応的な思考の方が良い結果になる可能性が示唆されています。
普段から皆様ができる事としては、自分自身の活動パターンの調整を行う事で痛みに過度に振り回されない
活動のペースや自身の行動へのコントロール感を獲得するペーシングや、
日常生活が痛みによって重篤に阻害されている状態から変化への動機づけを高める事で、皆様が行う痛みへの対処の増進を図る事です。
痛みの存在を認めた上で、積極的に自分の望む活動や物事に取り組む態度を表すアクセプタンスは健康関連QOLと関連する事が報告されています(Mason VL et al,2008.)。
自己効力感チェックシート
https://tsumugu-shiatsu.com/pain-disability-assessment-scale/ (Pain Disability Assessment Scale:PDAS)
PDSAは20項目4件法の自記式尺度で、生活障害度の測定に用いる。PDSAは0から60点の値をとり、得点が高い程痛みに伴う生活障害度が高い事を示す。
https://www.workcover.wa.gov.au/wp-content/uploads/sites/2/2015/07/pain_self_efficacy_questionnaire.pdf(Pain Self-Efficacy Questionnaire:PSEQ)
PSEQは10項目7件法の自記式尺度で、痛みの自己効力感の測定に用いる。PSEQは0から60点の値をとり、得点が高いほど痛みの自己効力感が高い事を示す。
PCSは13項目5件法の自記式尺度で、痛みに対するネガティブな評価をあらわす破局的思考の測定に用いる。PCSは0から52点の値をとり、得点が高い程破局的思考が強い事を示す。
Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS
HADSは14項目4件法の自記式尺度で、身体疾患を有する者のうつ・不安の程度を測定するために用いる。
最後に
如何でしたか。なんとなく言いたい事は伝わりましたかね。
気持ちを前向きに向けると、精神のみでなく、身体も健康になるって事です。
慢性痛とうまく向き合えていない医療従事者の皆様においては、お一人お一人への対応を再考して頂き、
『治せるセラピスト』を目指しましょう。