痛みを理解すると、人生が豊かになる!?

こんにちは。

今回は、『痛み』について、解説していきたいと思います。

痛みに対する考え方・向き合い方を知ると、身体も健康になり、Quality of working lifeも向上する事でしょう!

この記事は約10分で読めます!

痛みにの定義・概念

痛みの定義

1986年、国際疼痛学会(International Assosiation for the Study of Pain : IASP)が『痛みの定義』を定め、全世界に発信し、現在はこの定義に基づき痛みの概念や意義、病態などが整理されている。

An unpleasant and emotional experience associated with actual or potential tissue damage, or described in terms of such damage.

痛みは、組織の実質的あるいは潜在的傷害に基づいて起こる不快な感覚・情動体験であり、それには組織損傷を伴うものと、そのような損傷があるように表現されるものがある。

つまり、、、

痛みには、不快な感覚・情動体験組織損傷を伴って生じる生理的な痛み、明らかな損傷がなくても生じる痛みが存在する事を示している。

痛みは決して「客観的」に測定できない事が強調されていて、心理的要因と侵害受容的要因は区別ができず、心理的な面を無視して痛みを考える事はできないと言われています。

不快な感覚・情動体験

感覚的側面

痛みの部位、強度、持続性などといった痛みの種類を識別する身体的な痛み感覚であり、「感覚-識別」の側面とも呼ばれている。

情動的側面

情動とは、怒り、恐怖、喜び、悲しみなど急速に引き起こされた一次的かつ急激な感情の変化のこと。

情動的側面とは、痛みによって引き起こされる“不安”、“抑うつ”、“恐怖”などの不快感そのものという事ができる。痛みは情動そのものであるとする見方もある。様々な行動意欲に影響する事から「意欲-情動」の側面とも呼ばれている。

認知的側面

痛みの認知的側面とは、過去に経験した痛みの記憶、注意、予測などに関連して身体にとっての痛みの意義を評価し、認識する事であり、「認知-評価」の側面とも呼ばれている。

つまり、痛みに対して注意を向けるか、また、予測しているかなどによって痛みの感じ方は変化する。

*慢性疼痛(簡単に説明すると、痛みが3ヶ月以上続くもの)を有する方では、痛み体験を過度に消極的に捉えるといった破局的思考(catastrophizing)に陥っている事が多く、これが痛みへの不安や恐怖心を増し、結果、痛みの増強につながっている事がある。痛みの恐怖ー回避モデル (fear avoidance model)

急性痛と慢性痛

急性痛

明らかな組織損傷がある場合が殆どで、その治癒に必要な期間内に生じる痛みである。つまり、急性痛は生体の警告信号として重要な意義があり、もし急性痛が生じなければ生命の危険も脅かされる。そして、痛みの多面性からみると、急性痛は「感覚」的側面が色濃い痛みと言える。

慢性疼痛

*IASPから「3ヶ月以上にわたり持続または頻発する痛み」という定義が発表された。

組織損傷が明らかに治癒しているにも関わらず残存する痛みや、組織損傷がない状況で通常痛みとは感じない程度の軽微な刺激に対する感覚が痛みとして表現されるものをいう。

慢性疼痛の生物学的意義はなく、その存在自体が日常生活動作(ADL)生活の質(QOL)労働の質(QOWl)に多大な悪影響を及ぼす事から、一つの疾病として捉える必要があると指摘されている。

痛みの多面性からみると、慢性疼痛は感覚的側面よりも「情動」や「認知」的側面が色濃い痛みと言える。ただし、これらの側面のうちどの側面が色濃く反映した痛みであるかは個人やその環境によっても異なる

痛みの疫学

慢性疼痛の実態 ー慢性疼痛はもはや国民病ー

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/04.pdf(厚生労働省PDF)

本邦の疫学調査の結果によれば、運動器(腰痛や肩凝りなど)の慢性疼痛の有訴者率は人口比で15.4%、患者数は2,000万人以上に及ぶと推計されている。

つまり、多くの国民が運動器の慢性疼痛に苦しんでいる事は明白であり、もはや“国民病”になっているといっても過言ではない。

運動器の慢性疼痛の特徴

疫学調査の結果によれば、運動器の慢性疼痛は都市部在住の30〜50代の壮年期に多く。職種もデスクワークを主とする専門職や事務・技術職に多い事が明らかになっている。

つまり、単に筋骨格系(筋肉や骨)への機械的負荷やそれらの傷害だけでなく、身体活動性の低下や心理・社会的ストレスなど、多くの要因が関与している可能性が高い。

慢性疼痛がADLやQOL・QOWlならびに社会経済的に及ぼす影響

ADL:日常生活動作

Breivik H,et al.2006.によると、慢性疼痛によって大きな障害をきたすADLとして、屋外作業や自動車の運転、物の持ち上げ、運動などが挙がっている。

また、少なからず障害となるADLとして、家事や歩行、社会活動の参加などが挙がっており、基本的なADLさえも障害が及んでいる。

QOL :生活の質・QOWl:労働生活の質

Nakamura M,et al.2011.によると、慢性疼痛の発生は男女とも、間違いなくQOLの低下をもたらす。

社会経済的に及ぼす影響

医療費などの直接的コストの高騰だけでなく、欠勤や休職、失業、仕事効率の低下などに基づく間接的コスト損失も問題となっている。

本邦の調査結果では、運動器の慢性疼痛患者の約10.0%は就学や就労に制限を余儀なくされており、これらに基づく間接的なコスト損失は約3,700億円にも及ぶと試算されている。(Nakayama M, et al。2011)

 

如何でしたか?痛みについて理解できましたか?

皆さんに理解していただきたい事は、痛みというのは、情動や記憶などからも出現する事があるって事です。痛みの恐怖-回避型モデルhttps://qow-therapist.com/「気象と慢性痛の関係」/(以前の記事)の悪循環になると少し大変かもせれません。

なんでもかんでも明るくしなさいとは言いません。ただ、痛みにも情動の部分があるんだなって思っていただくと、少しは楽になるかもしれませんね。

 

[contact-form-7 404 "Not Found"]
2019/11/10 タグ: | その他